あなたのための「著作権」概論

いろいろなWeb掲示板、Weblogを斜めに見ていると、
ある方は必要以上に「著作権」という言葉に戦々恐々とし、
また別の方は逆に全く無頓着だったりしています。

私は法律の専門家ではないのですが、私の知っている範囲で
著作権の概念をお話しておくのもいいかと思い、ここに
書いておきます。
それほど、あまりにも無知な状態だと思うのです。
(知らないことは恥ではないです。アクセスが容易な情報源や、
基本的な概念を教えられるよい教師が少ないという状況も
あるわけですから)

読者の数はごくわずかなので、どれほどの意味があるかは
定かでありませんが、何かの足しにはなると信じて、とりあえず
書くことにします。
といっても、著作権の二つの目的とその関係をお話するだけ
なのですが。

著作権には二つの目的があります。

一つ目は、著作者の権利を保護することです。例を挙げれば、
小説家が、自分の書いた小説で、適切な額の対価を
得られるようにする、ということです。
逆の言い方をすると、他人が書いた小説を、勝手に自分の
ものにしてしまって、商売をしてはいけない、ということです。

二つ目の目的は、社会が生み出した叡智を、社会として
継承・利用できるようにし、より多くの有益な叡智を生み出す
助けとする、ということです。
小説家のたとえで言えば、『我が輩は猫である』のアイデアを
利用して、猫が語り手の小説を書き、それを売るというような
ことです。
(あるいは、和歌をたしなむ人であれば、「本歌取り」の技法を
保護する法理である、と思っていただくといいかも知れません)。

二つの目的は相反するように見えます。実際反しています。
この対立を解決するため、著作権法は著作権の保護対象と
保護期間を限定することで対処しています。

著作権という概念が生まれた当時は、後者(著作を利用する側の
保護)が優位にあるものと考えられていました。
一人の人間が生み出した著作であるとはいえ、その人間は
社会に依存しています。他の著作にも依存しています。
そうした前提に立てば、個人の利益をあまり厚く保護するよりも、
著作をより多くの人に利用されるようにすることで、社会の叡智を
より増やそう、という考え方が自然であると分かります。

ただ、近年では、こうした関係は逆転しつつあります。
たとえば、アメリカでは著作権の保護期間が延長され続けています。
日本でも同様の動きが見られます。

著作者が著作でビジネスを行う期間が延びた、と同時に、
社会(先ほどのたとえにあわせると、次の世代の小説家)は
先行する著作を利用することが難しくなってきているわけです。

こうした傾向は、社会的なデジタル化の進展により著作物について
「劣化しないコピー」が簡単に作成できるようになったこと、
キャラクタービジネスが巨大産業化したことなどが背景にあります。
現在は、技術的革新、社会の変化が著作権の変更を要求している
状況である、と言えましょう。


以上、著作権の二つの目的とその関係、近年の動向を述べました。
今後のネット生活にお役立ていただければ幸いです。

より詳細を知りたい方は、法律や、判例を読んでご自分で研究して
みてください。残念ながら私は研究不足です。

著作権の概念的な研究、近年の技術動向との関係を知りたい方には、
ローレンス・レッシグ氏の著作『コモンズ』をお勧めします。
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by izagon | 2004-04-04 23:07 | 沈思黙考


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