『八州廻りと博徒』

落合延孝著、山川出版社。

イマイチでした。
私思うに、日本史学者は一般向けの文章を書く訓練をしていない
のではないでしょうか。
史料を現代語に訳しておしまい、みたいな印象を受けました
(もちろん、それだけではないですが)。

歴史家が一般向け書籍を書くとき、現代社会の常識で生きている
人間に対して、各時代の社会の常識で解釈された事件を紹介する
ことになるわけですから、それなりの配慮があっていいのじゃないかと
思うのです。

この本で例を探すと、「佐十郎」という道案内に関する記述が
よい例でしょう。

この「道案内」という職業は、関東取締出役(八州廻り)など
幕府の役人が各地方で仕事をする際に現地のガイドを
したり地方の有力者とかけあったりするのが仕事です。
いわば公権力の末端に位置する職業です。
ところが、江戸時代中期以降になると、虎の威を借る狐と
なって各地の村々を搾取したり、禁じられている賭博を自ら
開催するようになった、というのです。

佐十郎はその悪徳官吏の例として取り上げられているのですが、
上記のような道案内の実態が紹介される前に、佐十郎が道案内に
任命されたとか、博打の胴元になったとかいう記述が出てくるので、
読者は(あれ?この佐十郎とさっきの佐十郎は別人だよな?官吏が
博打を開帳するなんてありえないよね???)と疑問だらけになって
しまうのです。
もうちょっと親切な書き方はできなかったのかな、と思いました。

ただ、そういうことを言ってしまうと、そもそもこの本は
タイトルと内容が一致していないという意味で分かりにくいのですよね。

書籍の内容は、ある改革組合村(江戸時代後期に行われた
町村合併のようだと思いねえ)の大惣代(まあ村長だと思いねえ)
の日記から、江戸時代末期の農村での(自治的な)警察行政と
博徒の発生とを読み取っているもので、八州廻りはあまり
出てきません。

この日記は相当な分量と質を備えているものと見受けられるので、
いくつかトピックを取り上げてこれを紹介してもらった方が面白かった
のではないかと思われます。
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by izagon | 2004-05-05 18:03 | 読書日記


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