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浅田農産事件について農家の子が思うこと

浅田農産の事件について、畜産農家の息子に生まれ、
親不孝にもSEなどというヤクザな職業に就いた私が
思うことを書き留めておきます。

会長夫妻の自殺はやりきれないことですが、それでも
浅田農産への批判はあって然るべきです。
当然、死者に鞭打つ必要はないです。が、詳細は
調べられるべきですし、故人のことではありますが、
当時の会長の言動は広く知られるべきだと思います。

その過程で、愚かな判断、愚かな行動には、きちんと
批判を加えるのは倫理的・道義的にみて間違ったこと
では無いと思います。


さて。
私の父は畜産農家です。
詳しく言うと、畜産業を営む会社の社長です。

私は中学生の頃に、その父からこんなことを言われました。

「俺がこの仕事に就いた頃、日本人は年間に数十グラム
 しか肉を食べられなかった。今は何キロと食べている。
 その全てが俺の仕事の成果だと威張るつもりは無いけど、
 いくらか貢献できたと誇りに思っている」

以来、私は父を尊敬しています。仕事をするようになって、
「果たして俺の仕事は社会になんらかの貢献をしているのか?」と
自問するのですが、まだ誇りに思えるほどの仕事は
できていません。


そんな父は、浅田農産の事件を見聞して、怒っていました。
「あんなことは絶対にしてはいけない」と。
人が食べるものを作る人間として、やってはいけないことだと。
さらに、
感染症にかかった場合の行動として、隠蔽するというのは
絶対にやってはいけないことだとも。

補足します。
農業がいかに工業化されているといっても(浅田農産が
数十万羽を扱う大農場であっても)、農場には人が出入りします。
獣医、薬品会社、精肉会社など。どれをとっても、同業者に
出入りする人ばかりです。
幸い、今回の事件では起きませんでしたが、アウトブレイクする
危険性は非常に高かったと思います。
中小企業の経営者として、自社が蒙る被害の大きさに恐れを
なしたとしても、同業者、関連業者に及ぼす影響の大きさを
普通に考えれば、隠蔽などできることではないのです。


繰り返しますが、浅田農産事件については今後もきちんと
調査と問責があってしかるべきだと思います。
会長夫婦の不幸についてはいたましいと言うほかありませんが、
我々は我々でするべきことをし、反省するべきは反省する、
しかできないと思うのです。
by izagon | 2004-05-10 17:03 | 沈思黙考


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