読書のもたらす驚き

何の気なしに本を読んでいるときに、いきなり私の心情を正確に
表現する言葉が出てくると、とてもびっくりします。

シャーロック・ホームズの第二長編『四つの署名』を読み始めた
のですが、依頼人メアリーに恋心を抱いた、ワトソン博士の心情の
吐露、これには非常に驚かされました。
いわく、


私としたことが、金もなく、足のわるい一介の退役軍医の身で、そんなことを考えるなんて、何という身のほど知らずだろう!彼女はまったく「事件の材料の一つ」にすぎないのだ。私の未来にしてもし暗黒であるのなら、暗黒のままにあらしめよ!鬼火にも似た架空の光明なぞ求めるべきではない。


名探偵にして奇人のホームズに対して、常識と温かい人間性を
持つ、おなじみのワトソン博士ですが、第一作の『緋色の研究』で
ホームズと出会ったとき、彼はインドでの軍隊勤務を病で終え、
衰えた体を抱えて帰国したばかりでした。
『四つの署名』事件の頃も、まだインド時代の怪我の後遺症を
抱えており、生活、ことに将来の生活については不安定な立場
だったのでしょう。

恋心を抱きながら、なお自制を願うその心情、私も痛切に感じた
ことがあるものなので、この一節を読んでたいへん驚き、また
感心したものです。
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by izagon | 2004-09-03 17:04 | 読書日記


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